アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)/伊坂 幸太郎

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はずれのない、

あるいは 極端に はずれる可能性の小さい 作家さんというのはいるものである。

伊坂幸太郎さんが そうである。
月並みな表現だろうがなんだろうが、とにかくおもしろい。

それで感想を終らせてしまって
まったくかまわないのではないかと思わせるほど。

本作品は
アパートに引っ越してきた大学生が
「一緒に本屋を襲わないか」、などと初対面の人物から、
もちかけられるという、

伊坂ファンならおそらく、苦笑いしながら
「まったくもう」と、いいたくなる始まり方をする。

人にたとえれば、いつもの無理難題を押し付けられながらも、
その愛嬌ある人柄にほだされて、
今回もついつい、言うことを聞いてしまった、
みたいな、

にくめなさ、

を全面に押し出すような 始まり方。

これが伊坂ワールドでなくてなんであろう。

ページを読み進めて、いくつかの場面設定の状況を理解したら、
あとは身を任せていればいい。

現実離れしたことを描きながらも、
不思議と不自然とは違い、
ちゃんとストーリーについていけるのは、
文章の基本的骨格がしっかりしているからだろうか。

創造が飛躍的だとしても、描写はロジカルだから、
おいてけぼりにならずにすむ。
これが読みやすさだと思う。


ちょっと読書が好きなタイプの人なら、
あの、次のページをはやくめくりたくなる感じを、
かならずや体感できるに違いない。